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スウィーニー・トッド ~フリート街の悪魔の理髪師~

スウィーニー・トッド ~フリート街の悪魔の理髪師~_f0031200_0214026.jpg楽しみにしていた映画の『スウィーニー・トッド』
初日の19日、さっそく見に行ってきた。

思った以上に血みどろで、聞いてた以上におセンチなスウィーニー(笑)。

ホラーの要素が強くて、笑いはほとんど無し。悪くはないけど、「ひ」さんに聞いていたように“ミュージカルっぽくない” 監督のTim Burtonが、ミュージカルは好きじゃないそうだからか(?)歌が芝居に結びついていない気がした。





荘厳な音楽が流れ、タイトルが映し出される。。待ちに待った『スウィーニー』が始まる!とワクワク(映画向きではない♪The Ballad of Sweeney Todd がBGMだけなのは仕方ないけど、あの不気味な“ピーッ”という警笛は欲しかったなぁ)。
19世紀のロンドンにぴったりの、ダークなモノクロ映像。滴り落ち、どこまでも流れて行く、粘着質の真っ赤な血。。!オープニングは、正にティム・バートンの世界だ。

まず、“ミュージカルっぽくない”のはなぜだろう?
プロの歌手は1人だけ(Laura M. Kelly/ロンドンのMarry Poppins主演)。作詞・作曲のStephen Sondheimは、「この映画にミュージカル俳優はいらない」と言ったそうだが、かなりの部分が歌で語られているのだから、台詞と歌が切り離されていては(こちらの)感情移入が難しい。Johnny Deppを始め、皆そこそこに歌っているけれど、軽いポップスのようで胸にズシンとこないのだ。唯一、トビー少年(Edward Sanders)だけは、いい歌いっぷりで説得力があった。

また、ドラマが薄く感じられたが、スウィーニー(以下ST)とミセス・ラベット(Helena B. Carter)以外の人物の歌や場面がいくつかカットされ、そのキャラクターが見えてこなかったからだろうか?誰もがわりと普通で、物事を冷静に判断しているような。。?
“あの時代の闇に蝕まれた人々が、狂気の中で起こす犯罪”には見えず、トビーがSTに手を掛ける場面も、「なぜ?」「どこまで知ってるの?」と思う。ラベットも「そんなに悲しそうなのに、トビーを閉じ込めちゃうのね?」 。。。とっても残酷(笑)。

STは舞台の3倍は人を殺していて、思った以上の流血!で貧血起こしそう(スプラッタが苦手な方は、せめてDVDになってからご覧ください・笑)。虫やらねずみやら、肉むにゅむにゅやら。。No More! と英語で叫びたかった(笑)。

ジョアンナ(Jayne Wisener)とアンソニー(Jamie C. Bower)の出会いは、一目惚れしたにしては2人の距離も気持ちも遠く、アンソニーは♪I feel you, Johanna... と歌いつつ“感じて”いない。そして、あれだけ暴行を受けた後でも優雅に歌い、違和感がある(虫けらのように扱われた悔しさとか、決意とか、何かあるでしょう?)。

ジョニーは彼独自のSTを創り上げていて、さすが!だと思ったが、特によかったのは2つの場面だ。♪友だち(My Friends)で、「独りにしてくれ」の台詞から(そうよね、独りになりたいよね。。)「ついに、完全なる腕がよみがえった!」までの抑えた演技はゾクゾクする。そして、狂気のSTがカミソリを手に街に飛び出す場面(♪救世主/Epiphany)は、ソンドハイムも感心していたそうだが、映画ならではの演出だろう。

その他の“映画ならでは”は♪リトル・プリースト(A Little Priest)で、2人が窓の外の市民らをネタに妄想するのが面白い。あと例の椅子、手作りなのね?器用だわ~(いや、特注する舞台版がヘンなのか?笑)。
♪海辺にて(By the Sea)はトッピで笑えたけれど、♪ロンドンで最悪のパイ(The Worst Pies in London)/♪コンテスト(The Contest)/♪リトル・プリーストには笑いがない。暗い物語の中で、ブラックながらも笑える場面なのに。。。

加えて残念だったのは、大好きなナンバー♪ジョアンナ(Johanna/ソロではなく、四重唱の方。三重唱になっていたけど)で泣けなかったこと。そして、低層階級の象徴であり、不安を掻き立てる女乞食の存在が薄かったことで、ラストの衝撃も弱くなってしまったことだ。

この映画、ミュージカルである必要があったのだろうか?
バートン&デップコンビならば、音楽なしでも十分素晴らしい作品に仕上がったと思う。
。。。でもいろんな意味で楽しめたし、もう一度見る予定だ(笑)。